――パンに興味を持ちはじめたのはいつ頃でしたか?
保育園の頃から叔父によくキャンプに連れて行ってもらっていました。その叔父がパンが好きで、いろいろなパン屋さんに連れて行ってくれるんですよ。佐賀や熊本にキャンプに出掛けては、パン屋さん巡りを楽しんで。いろいろなパンを食べたことが今につながっているのかも知れません。
――ナカムラを選んだ理由を聞かせてください。
高校では食品科学科を専攻していて、天然酵母の研究に取り組む中で、やっぱりパンが楽しいと考えるようになりました。ナカムラならお菓子もパンも学べると進学。最初は高校卒業と同時にパン工場に就職しようとも考えていましたが、きちんと学んでいた方が自分のためになると考えました。
――実際に学んでみてどうでしたか?
やっぱりパンの授業が面白かったですね。一方でケーキの絞りやメッセージ書きなど細かな作業は得意ではありませんでした。つくったパンを食べた人に喜んでもらえる方が嬉しかったですし、パン職人をめざすとなった時、叔父がいちばん喜んでくれました(笑)。
――叔父さんの影響は大きいですね! 新しく移転オープンしたお店についても教えてください。
子どもの頃から自然の中でパンを食べていた私は、落ち着いた木の感じと緑を入れてナチュラルでふんわりとした店づくりがしたいと思っていました。また、この地域で育ったので地元に根ざしたいという想いが強く、誰もが気軽に立ち寄れる店にしたいと考えています。なので、自分が好きなハード系のパンは全体1割。地元の人々の食卓に合うようなやわらかいパンを多く並べています。
――地域のニーズに応えているんですね。
とはいえ、自分自身のモチベーションとしてハード系の高度な技術が必要なパンづくりにもこだわっていきたいと思っているんですよ。また、変にこじゃれた感じにせず、自然体の店構えでいたい。それでいて、今どきの美味しさを伝えられたら最高ですね。
――奥様もナカムラ出身だと伺いました。
最初から独立願望を持っていたわけではありませんが、妻と出会い、母の後押しもあり、結婚を機に何かできないかと2人で話し合いました。店では妻がケーキを焼いて、僕がパンを焼いています。
――素敵ですね。ものづくりへのこだわりもぜひ教えてください。
地産地消を大切にしながらも求めやすい価格にすることです。高齢の方も子どもさんも一人で買いに来ることができるような店でありたいですし、誰かの何かのきっかけになれる店になれたらと思います。パン屋さんは買い物が済んだら「さようなら」という感じなんですが、それが嫌なのでコーヒーでも飲みながらお客様と話ができればとカフェスペースをつくりました。いつか弾き語りのミュージシャンを招くなど、面白い場所になれたらと思いますね。
――人が集まる店になりそうですね!
自分自身、若いなりにいろいろな経験をしてきましたし、横のつながりも大きく世代の異なる友人から刺激を受けてきました。今も糸島を拠点にコミュニティが広がるのを楽しめています。お店は母校の高校の隣にあるので後輩も立ち寄ってくれますし、高校でパンの授業をする機会もいただいています。地域から得たものを循環していけたらと思っています。
——ありがとうございました。
学生時代はあまり真面目なタイプではなかったので、先生方からは独立するなんて思われていなかったかも知れません。今考えると、学生時代から目標をしっかり持つことも大事だと思いますね。目標を持つことで、今自分が何をすべき見えてきます。大きな目標も分解して小さな達成を積み重ねることでゴールに辿り着けるはず。チャンスがあればやってみる、考え過ぎずに飛び込んでみることも必要かもしれません。そこから学ぶこともきっとあると思いますよ。