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Patisserie ANN(パティスリー アン)

韓国・ソウル出身の安 洪珉さんは、29歳まで土木の仕事に携わっていたが、趣味だった菓子づくりの情熱を胸に来日。中村調理製菓専門学校で学び、福岡の名店「PATISSERIE Jacques」(パティスリー ジャック)で6年間修業を積んだ。2020年7月、妻の地元・唐津に『Patisserie ANN』をオープン。地元の果物などを活かしたケーキや生菓子が、地域の人々に親しまれている。

九州 スイーツ・カフェ
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安 洪珉(アン ホンミン)

平成26(2014)年/製菓技術科(2年)

安 洪珉(アン ホンミン) 氏オーナーシェフ

1986年、韓国・ソウル生まれ。29歳まで土木関係の仕事に従事していたが、趣味の菓子づくりを本格的に学ぶことを目的に来日。中村調理製菓専門学校で学び、卒業後は福岡の人気パティスリー「ジャック」に勤務。6年間の修業を経て2020年7月、妻の故郷・唐津市で『Patisserie ANN』を開業。地元の果物を使ったケーキをはじめ、修業で培った確かな技術による焼菓子も人気を集めている。

 

――パティシエをめざすようになったきっかけを教えてください。
もとは趣味でお菓子を作っていました。休日になるとケーキやクッキーを焼いて、家族や友人に配って楽しんでいたんです。とても喜んでもらえて、自分のつくったもので人が笑顔になるのが嬉しかった。ただ、あくまでも趣味の範囲で、仕事にしようとは考えていませんでした。そんな私に、「そこまで好きなら一度ちゃんとやってみたらどうか」と父が背中を押してくれました。父自身も日本への留学経験があり、その言葉がきっかけで、土木の仕事を辞め、日本で製菓を学ぶ決意を固めました。
 
――なぜ、日本で学ぼうと考え、進学先をナカムラに決めたのでしょうか。
日本の菓子文化は世界的に見ても繊細で完成度が高く、学ぶなら日本しかないと思っていました。東京の語学学校で日本語を学びながら準備をしていましたが、東日本大震災を機に一度帰国。その後、ソウルで開かれた日本留学博覧会で中村 哲校長と出会いました。東京や大阪の有名校も参加していましたが、校長自らブースに立たれていたのはナカムラだけ。話を聞いてみると、設備や講師陣、生徒への向き合い方に魅力を感じ「ここで学びたい」と思いました。外国人が多すぎず、日本語環境で学べる点もナカムラを選んだ理由の一つです。
 
――学校生活で印象に残っていることはありますか?
当時30歳で、周囲よりも10歳近く年上。しかも外国人という立場に不安もありましたが、すぐに馴染むことができました。先生方も一人の人間として真摯に向き合ってくれたことも印象的でしたね。また、有名パティシエが特別講師として来校される機会も多く、福岡にいながら第一線の技術や考え方に触れられたことも大きな刺激になりました。


――卒業後の進路について教えてください。
在学中から、福岡の「PATISSERIE Jacques」(パティスリー ジャック)でアルバイトをさせてもらっていました。担任の先生が「ジャック」の出身だったこともあり、「少しでも早く現場に出たい」という私の気持ちを汲んで、紹介してくださったんです。卒業後もそのまま「ジャック」に就職し、6年間勤めました。最初は失敗ばかりで怒られてばかり。「自分なんかがここにいていいのか」と悩む日々もありましたが、同僚のサポートで少しずつできることが増えていきました。3年目のある日、お客様から「マロンパイがおいしかった」とお電話をいただき、それを大塚 良成シェフがみんなの前で伝えてくださったんです。「よく頑張った」と褒めてもらえたのは、そのときが初めて。嬉しくてさらに頑張ろうと思いましたね。
 
――「PATISSERIE Jacques」(パティスリー ジャック)での仕事を通して、どのような学びがありましたか?
仕事の密度が高く、スピード・正確さ・清潔さなど、どれも高いレベルを求められました。焼き場を任されるようになってからは、生地の焼き加減ひとつでケーキ全体の仕上がりが左右されることを痛感し、日々緊張感を持って「焼き」と向き合っていましたね。繁忙期はとくに大変で、焼いても焼いても追いつかないほどの注文が入りました。それでも「去年より売上が伸びた」と聞くと、自分の仕事が誰かの役に立っているという実感が得られました。また、自分が担当したお菓子を通して、大塚シェフの味をより多くの人に届けられることが嬉しかったですし、その責任感が、仕事の質にも自然と影響していたと思います。
 
――独立を考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
「最低でも5年」は修業しようと決めていたので、6年目を迎えるころには、そろそろ自分のケーキを出したいと思うようになりました。妻の地元・佐賀県唐津市には個人経営のケーキ店やカフェが少なく、また、「ジャック」時代は朝から晩まで働きづめで家族との時間がとれなかったこともあり、自宅兼店舗で開業することを考えました。準備段階では、妻も販売や包装を学ぶために「ジャック」で数カ月ほど勤務し、販売の基本を身につけてくれました。私たちを見守り、支えてくださった大塚シェフには感謝の気持ちでいっぱいです。

――お店のコンセプトについて教えてください。
地元・唐津の素材を活かした菓子づくりを意識しています。唐津には〈いちごさん〉というブランドいちごや、七山で採れる黒いちじくなど、魅力的な果物がたくさんあるんです。白いちごや柑橘類など、季節ごとの素材を取り入れながら、唐津ならではの味を届けたいという思いでやっています。ケーキは、日常的に食べるというより、「ちょっと特別な日に」「誰かと分け合うとき」に買っていただくものだと思うんです。箱を開けた瞬間に「わぁ」と声が上がるような、そんな華やかさや驚きを感じてもらえるようなケーキを目指しています。また、「ジャック」で焼き場を任されていた経験から、焼菓子にも力を入れています。生地そのものの香ばしさや食感を大切にし、贈り物としてもご利用いただけるよう、丁寧に仕上げています。ありがたいことに、「焼菓子をいただいて美味しかったので、ケーキを買いに来ました」と、ご来店いただくお客様も増えてきました。
 
――今後、どのような店づくりをしていきたいと考えていますか?
基本は唐津の素材を活かしたお菓子づくりを大切にしていきたいと考えています。地元の農家さんとも繋がりながら、旬の果物を使って、その時期ならではの味を楽しんでいただきたいですね。そして、わざわざ足を運んでくださるお客様をがっかりさせないように、忙しいときでも丁寧な仕事を心がけることが一番だと思っています。今は、インターネットでもさまざまなものが購入できる時代ですが、それでも「この店に来たい」と思っていただける存在であり続けたいですね。
 
――ありがとうございました。

 

学生のうちは、失敗しても許される貴重な時期だと思います。だからこそ、今のうちにしっかりと基礎を身につけておくことが大切です。私自身も学生の頃から夏休みを使っていろんなお店に研修に行かせていただきましたし、今でも旅先では気になるお店では声をかけて厨房を見せていただいたりしています。食べて帰るだけでなく、「自分はこういう菓子を作っていて、あなたのお店が好きで来ました」と気持ちを伝えることで、オーナーの方もきっと喜んでくださると思います。恥ずかしがらず、自分から動くこと。それがきっかけで広がっていく世界もあるはずです。頑張ってください。

 

 

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