——もともと洋食の世界にいらしたそうですね。
はい。高校を卒業後、ファミリーレストランを展開する東京の会社に入社しました。そのことがきっかけで「食」の世界に興味を持ち、その世界を追求したくて中村に入学したのです。卒業後は、新宿のスペイン料理店で3年、渋谷のイタリア料理店で2年、経験を積みました。
——ラーメンの世界に転身されたのは、どのような経緯があったのでしょう?
10年ほど料理の世界を離れていましたが、地元に戻り、新しいことを始めようと考えました。地域の人たちに愛される味を!と考えたときに、福岡のソウルフードであるラーメンを追求したいという想いに至りました。とはいえ、福岡にはとんこつラーメンのお店がたくさんあります。長年、東京で生活していましたし、中華そばはまだ福岡に定着していなかったことから、福岡で愛される中華そばをつくろうと考えました。
——どのようなイメージで「博多中華そば」を完成させていったのでしょうか。
ラーメンの世界はとても奥が深いんです。料理の世界は繊細さが必要ですが、ラーメンの世界は、繊細さに加えてパンチも求められます。きれいにつくると物足りなく感じますし、パンチもありながら繊細さも表現しなければなりません。そこで、スープは、かつおぶし、煮干し、昆布、椎茸など、天然にこだわった素材でダシを取った和風スープと、丁寧に煮込んだ臭みのない鶏ガラ豚骨スープを合わせたWスープにすることに。Wスープで重要なのはバランスです。魚介が立ちすぎると辛さを感じてしまいますし、豚骨が立ちすぎると、従来のとんこつラーメンに近くなってしまいます。常にバランスを考え、季節や気候に合わせて、その都度ダシの取り方を変えています。
——麺も福岡のとんこつラーメンとは全く違いますね。
はい。福岡の製麺所はとんこつラーメンと相性のいい細麺中心ですので、「まるげん」用に平麺と太麺を特別に作ってもらっています。試行錯誤しながら現在のカタチになっていますが、現在もなお、改良を続けています。
——鈴木さんが、料理人として大切にされていることはどんなことでしょうか。
いちばん意識しているのは、私たちは何のためにラーメンを作っているかということ。私たちは、わざわざこの店に足を運んでくださるお客様に喜んでいただくこと、幸福感を得ていただくことをめざしています。これからも、お客様の声に耳を傾けながら、お客様に満足していただけるものをつくることが、私たち料理人の使命だと感じています。
——今後については、どのようにお考えですか?
より一層、博多から発信する中華そばを追求し、一人でも多くの方に「まるげん」のラーメンを食べていただけるお店にしていきたいと考えています。
——ありがとうございました。
大袈裟かもしれませんが、料理もひとつの芸術。お客様を魅了し、お金をいただくものです。自身の想いを追求し、夢に向かって努力をし続ければ美味しい料理はできますし、人々から評価されるものになっていくはずです。相手がどのようなものを求めているか、どうすれば喜んでもらえるかを考えることで、人としても大きく成長できるはず。技術とともに人間性も成長できるよう、頑張ってください。