店舗紹介 Locations

エヌプラス > 店舗紹介 > PATISSERIE Jacques(パティスリー ジャック) > インタビュー

PATISSERIE Jacques(パティスリー ジャック)

“アシェットデセール”に魅せられて。福岡が世界に誇る名店で、素材の香りと食感を味わう贅沢なひとときを。

中央区 スイーツ・カフェ
  • #カフェ
  • #スイーツ
大塚 良成

昭和58(1983)年/調理師科1年コース

大塚 良成 氏オーナーシェフ

フランス料理のシェフをめざしていた頃に出合った “アシェットデセール”に心奪われ、パティシエの道へ。福岡や東京の洋菓子店で修業を積み、本場フランスで修行したいとアルザス地方にある「ジャック」で約2年7カ月に渡り、ジェラール・バンヌワルト氏に師事。帰国後は、仙台や福岡でオーナーとともに店舗の立ち上げから携わり、製菓長として手腕を発揮。1995年に「パティスリージャック」をオープン。世界中のパティシエがめざす「ルレ・デセール協会」所属メンバーとして注目を集める存在。

 

――料理人をめざしたきっかけは?
大学生の頃、流行りの洋菓子店の喫茶でアルバイトをしていました。当時から飲食に興味があり、自分の料理を誰かに食べてもらうことが好きだった私は、喫茶でケーキを提供する瞬間に人々の嬉しそうな笑顔を見ることが大好きでした。店の看板商品はチーズケーキ。とにかく凄い人気だったんですよ。さらに遡ると、私が高校生の頃から“アイビールック”と呼ばれるスタイルが流行っていて、雑誌を開けば海の向こうの風景ばかり。オシャレな料理や風景を見ては「格好いいなぁ」と憧れていたんです。多くの人で賑わう喫茶のアルバイトでは、珈琲やケーキの香りに包まれる空間のすべてがオシャレに映りました。その世界に魅力を感じ、大学卒業後はナカムラに進むことを決めました。
 
――当時、大学から進学する生徒はめずらしかったと伺っています。
そうですね。まわりには中卒や高卒の若い人が多く、スタートが遅かった私は負い目というか、プレッシャーのようなものを常に感じていました。今となれば、5歳、6歳の年齢差なんて変わりありませんが、その当時は年齢差を大きく感じていましたね。しかし、それはこの世界に入る時から分かっていたことだったので、“自分自身の努力で必ず克服するぞ”という気持ちで一杯でした。時間の長さよりも時間の濃さ、修行の内容に自分の意識を投じてきましたし、今でも職人歴を数えるより、仕事の密度を大切にしたいと考えています。
――ナカムラで印象に残っている授業は?
福岡の有名な料理店で腕を振るうシェフの指導を受けたり、イタリアの有名なシェフの講習を受けたり、学校のカリキュラムを通じて一流に触れることができました。また、現場実習では、有名レストランの厨房に入り、厨房ならではの緊張感を味わうこともできました。学校を通じて学生として厨房に入れてもらうことで、普通では体験できない特別な経験ができたと思います。そのような実習ができる調理学校は、当時の福岡にはナカムラしかなかったのではないでしょうか。
 
――パティシエをめざそうと思ったきかっけは?
最初は飲食店がしたいと考えていたんですよ。ナカムラには、和洋中それぞれに授業があり、どれも興味深かったですが、最終的にフランス料理をめざそうと市内の有名なレストランで研修を受けました。また、当時の校長先生の計らいにより、東京のレストランでクリスマスシーズンから年越しまで研修できることに。クリスマスシーズンのディナーコースは1つで1部と2部の2交代制。その準備から営業の間中、シェフ、パティシエ、サービススタッフの気迫がもの凄く、厨房はまるで戦場のような厳しい世界でしたが、その緊張感の先に美味しい料理はもちろん、贅沢な空間で最高の時間を過ごすことができたというお客様の喜びがありました。空腹を満たすだけではない食文化の奥深さ、学生の私には知り得ないゴージャスな世界が広がっていましたね。その中で、美しいデザートとの出合いがありました。料理の素晴らしさはもちろんですが、コースの最後に提供されるデザートはその日のフィナーレであり、感動のクライマックスです。甘くて酸っぱい香りと綺麗で華やかな“アシェットデセール”とは素晴らしい芸術であり、確固たるジャンルだと実感した私は、研修後に進路を聞かれた時、デザートに進みたいと答えました。
 
――お菓子づくりで重視していることは?
私がお菓子づくりで大切にしているのは、「香り」と「食感」です。いい香りを求めることができたら、その香りをカタチにしたいと思っていますね。口に含んだ時、香りが広がるようにするためには、素材そのものの鮮度や質が良くなければなりません。お客様が口に含んだ時、その香りにはっとしていただけたら嬉しいですね。中学生の頃に好きだったのは、金木犀の香り。今もふと香ると懐かしく感じるように、香りというのは、当時の記憶を蘇らせる大きなツールでもあり、自分たちが考えている以上に、私たちの人生と密接につながっているものだと感じています。今の学生さんにも難しく考えるのではなく、「いい香りだな」とか、そんな気持ちでお菓子づくりに取り組んで欲しいですね。また、同じフルーツでもその日、その時によって色合いが異なります。レシピにない部分ですが、目で見て「美しい」とか「綺麗」と感じる感覚的なところもぜひ大切にしてください。
 
――パティシエとして大切にしたい心得は?
私がナカムラの学生さんにも伝えているのは、「人のために頑張れ」ということです。人に喜んでもらうために頑張って欲しい。人のために頑張っていると結局は自分に返ってくると思います。そもそも、頑張っていない人が作るものに誰が感激してくれるでしょうか。もちろん、作り手としての喜びもあると思いますが、やっぱりそれを食べた人に喜んでもらうことがいちばんの原動力になると思います。ありきたりのことかも知れませんが、その思いを私自身もずっと大切にしています。
 
——ありがとうございました。
 

 

ナカムラでの授業中、「将来、自分でお店をしたい、独立したいと思う人は?」と尋ねたことがあります。結果は、クラスの10分の1の人が手を挙げたくらい。他の人は何をしたいのか尋ねると、数名はホテルで働きたいと希望していましたが、それ以外の人は返事もありませんでした。とはいえ、決して安くない授業料を払い、次のステップのために投資をしているのですから、もっと貪欲に学んで欲しいというのが私の本音です。人生は後戻りできませんし、今この瞬間に意識を高く行動していれば、習得できることは数多くあります。私の授業の中でも、学生さんに多くのヒントや将来に役立つことを教えたいと取り組んでいるので、ぜひ吸収して欲しいですね。そして、繰り返しになりますが、自分の目的だけのために頑張るのではなく、人から「ありがとう」と感謝される日々を意識して過ごして欲しいと思います。

pagetop