——川上さんが料理人を志したきっかけを教えてください。
祖父母が中洲で和食のお店を営んでいました。子どもの頃から料理番組が好きでしたし、自然な流れで料理人になりたいと思うようになりましたね。
——ナカムラを選んだ理由は? また、学生時代の思い出を教えてください。
ナカムラで学んでいた先輩の勧めで入学しました。学生時代の思い出といえば、夏の実習ですね。福岡・天神のデパートの7階にあった洋食レストランで仕事をさせていただき、忙しいながらも楽しくて、実習後もアルバイトとして働かせていただきました。
——卒業後はどのようなキャリアを築いてこられたのでしょう。
神戸のイタリア料理店に就職することが決まっていたのですが、ある日、髄膜炎で入院してしまったんです。闘病生活は40日にも及び、出席日数が足りず卒業延期になってしまいました。その後、無事に卒業を迎え、福岡市内のレストランに就職。新店の立ち上げを経験させていただくなど、8年間お世話になりました。退職後は学生時代のアルバイト先だったデパートのレストランの料理長が独立された佐世保の「牛王」へ。全国誌に掲載されるなど人気を集めるお店で、このスタイルを福岡の皆さんにも楽しんでいただきたいと、暖簾わけという形で福岡に「牛王」をオープンさせました。
——料理人として心がけていらっしゃることはありますか?
常に考えているのは、お腹を満たすだけでなく、心のお土産も持ち帰っていただきたいということです。これだけたくさんのお店がある中で、選んでいただくためにはどうすればいいか、といったことも意識しますね。
——名物のテールスープは商品化され、大変人気ですね。誕生までの経緯を教えてください。
常連のお客様が入院してしまい、お店に来られなくなってしまいました。どうしてもこのスープを飲みたいと、ご家族の方がお鍋を持ってこられたんです。そのときに考えたのが、さまざまな理由でお店に来られないお客様にも、このスープを飲んでいただきたいということ。試行錯誤を重ね、1年半後に商品化することができました。
——今後の展望について教えてください。
子どもの頃からご両親と通われていたり、お孫さんを連れてきてくださったり。3世代に渡って来てくださっているお客様も少なくありません。これからも変わらず、長年にわたり愛され続けるお店でありたいと思います。
——ありがとうございました。
学校の調理技術の試験は簡単に合格してしまうと自分のためになりません。何度も繰り返しながら自分で考え、感覚を身につけることが大切です。また、技術を身につける以前に大切なことがあります。それは、考え方を根付かせること。どんな仕事も全てはお客様に提供する料理につながっていくもので、無駄なことはありません。常に「自分で考える」ことを意識しながら、一つひとつの仕事に取り組んでほしいと思います。