——村川さんが食の世界を志したきっかけを教えてください。
父がホテルの和食部門で料理長をしていました。子どもの頃から父の背中を見て育ちましたし、父が作ってくれる料理がとても美味しくて。小学生の頃には和食の料理人になると決めていましたね。
——ナカムラを選んだ理由は? また、学生時代の思い出を教えてください。
高校時代にナカムラの校長が講演に来られたんです。話の内容はあまり覚えていないのですが、料理を学ぶならナカムラと思いました。ナカムラは先生との距離がとても近いんですよね。記憶に残っているのは日本料理の先生です。当時はとても怖かったのですが、今は凄く応援してくださっています。優しい先生よりも厳しかった先生の方が記憶に残っていますね。
——卒業後はどのようなキャリアを築いてこられたのでしょうか。
東京の「菊乃井」と神戸の「玄斎」で修業をさせていただきました。いずれ福岡に戻ろうとは思っていて、そのときはアラカルトもご提供したいと考えていたので、寿司店を経て福岡に戻ってきました。
——『むら川.』はどのようなお店ですか?
「日本酒と季節の料理」をコンセプトに、お料理もお酒も一緒に楽しんでいただけるお店でありたいと思っています。アラカルトもご用意しているのは、その方が自分も楽しいからです。たとえば一見さんが来られて、どんなメニューをオーダーされるかわからない方がワクワクするんですよね。食材は九州産を中心に使わせていただいています。ご縁をいただいて姪浜漁港の競りに行かせていただいているんですよ。自分自身が美味しいと感じる食材を選び、その食材の持ち味を引き出すことを意識しています。
——日本酒も充実されていますね。
はい。純米や純米吟醸を中心に全国の銘酒を常時10種類ほど置かせていただいています。いろんな種類を飲んでいただきたいので、90mlと1合をご用意しています。
——最後に。今後について教えてください。
東京や神戸にいた頃は全国各地の食材を使わせていただいていました。ここ福岡では食材の制限があり、料理の幅が制限されてしまうところもあるのですが、京都には制限がある中で発展してきたという歴史があります。なので、ここ福岡のいい食材を使って、ここでしかできない料理をご提供していきたい——そう思っています。
——ありがとうございました。
ナカムラを卒業して東京へ行くとき、たくさんの仲間が見送ってくれました。意気揚々と東京へ行ったものの、最初の4年は辛くて泣いていましたね。料理の世界って自分の成長が見えづらいんですよね。けれど、あるとき、揚げ物も煮物も炊き物も、自然にそつなくできるようになっている瞬間があるんです。そこからですね、この世界が楽しくなったのは。なので、ある時期までは我慢することも大切だと思います。とはいえ、入ってみて合わなければ辞めてもいいとも思うんです。辞めることは悪いことではありません。ただ、どんなカタチであれ、料理を続けることを考えてほしいですね。頑張ってください。