——三浦さんが食の世界を志したきっかけを教えてください。
小学生の頃から料理をすることが大好きでした。小学校を卒業したらすぐに料理の世界に入りたかったけど、そうはいきませんでしたね(笑)。当時は野球をしていたので、家族はプロ野球選手をめざしていると思っていたようですが、私の心は既に決まっていました。
——ナカムラに入られたのは、就職してからだったそうですね。
はい。宮崎の高校を卒業して、福岡の居酒屋に就職しました。その店の大将から「料理の世界でやっていくなら、専門学校で学んだ方がいい」とアドバイスされ、最初の1年でお金を貯めて、2年目に社員として働きながらナカムラに通わせていただきました。
——卒業後はどのような経験を積まれたのでしょうか。
25歳で『無尽蔵』の料理長に就任しました。けれど、当時はまだ居酒屋料理しかできず、必死になって独学で和食を勉強しました。当時からコの字のカウンターでしたので、お客様からは手元も見えてしまいます。その状況に最初は戸惑いましたが、逆手にとってライブ感を楽しんでいただこうと考えるようになりましたね。料理長として10年経った頃、違う視点で料理を見つめようと考え、店を辞めてフードコーディネーターとして活動しました。2年ほど経った頃、前オーナーから『無尽蔵』を譲り受けることになり、2009年4月よりこの店の店主となりました。
——『無尽蔵』はどのようなお店なのでしょうか。
季節の恵みを受けた旬の食材、その日の気候にふさわしい新鮮な食材と向き合い、インスピレーションを得て料理をつくります。お客様がお越しになられてからメニューが変わることもありますし、一時として妥協せず、伝統は重んじつつ、工夫と創造を進化させることを常に意識しています。料亭のようなかしこまった雰囲気があまり好きではなくて。「次は一体どんな料理が出てくるのだろう?」と、心躍らせながら会話を楽しんでいただけるお店でありたいんですよね。常連さんは、『無尽蔵』だからこそ味わえる料理を楽しみに来てくださっています。私の料理を食べていただき、「明日も頑張ろう」という気持ちになっていただきたいと思いながら、日々、料理をつくらせていただいています。
——最後に。三浦さんにとって“料理”とは?
料理という字は、理を料(はか)ると書きます。私たちは常々、お客様の理(心)の物差しで料られているのですが、その物差しの目盛りがグッと上がる=感動していただいているということになると考えます。私は「美味しかった」ではなく、「感動した」と言っていただけることをめざしています。これからも、自分の世界を研ぎ澄ませながら、日々進化し続けていきたいと思っています。
——ありがとうございました。