——荒井さんが食の世界を志したきっかけを教えてください。
祖母が魚の行商をしていたこともあり、料理をすることが好きで、高校生の頃には和食の道に進むことを決めていました。福岡市内の高校に通いながら居酒屋でアルバイトをしていたのですが、その店の料理人の多くが専門学校出身だったので、私も専門学校で学ぼうと考えナカムラに入りました。
——卒業後はどのような経験を積まれたのでしょうか。
東京の有名店に就職したものの、なかなか馴染むことができず、福岡に戻ってきました。学生時代にアルバイトをさせていただいていた「喜家(きっか)」(西中洲)に入らせていただき、8年半学ばせていただき、2011年9月、地元の吉富町から川を渡ってすぐの大分・中津に『味 あら井』をオープンさせました。
——『味あら井』はどのようなお店ですか?
九州には素晴らしい食材がたくさんありますので、その食材をシンプルに味わっていただく“九州割烹”を提案させていただいています。地元で獲れた鹿や猪なども使いますし、この界隈は海も近いので漁師さんから魚介を直接仕入れることもあります。また、自分で気になったり、知人に紹介してもらったりした生産者の方を訪ね、市場に出回らないものなども直接送っていただくこともありますね。それらの食材一つひとつと向き合い、いかに美味しくするかを考え、コースの内容を考えていきます。
——具体的にどのようなことを行なっているのでしょうか。
たとえば、城下かれいは締めて水分を抜き3時間以内にご提供しますが、カンパチは3日以上熟成をかけ旨味を引き出してから使います。肉も魚も、とくに天然の場合は個体差もありますから、目の前の食材を見てから、どのように料理するかを決めています。
——地方のお店だからこそのこだわりはありますか?
はい。地方にいていい食材を集めようとすると、原価が高騰してしまいます。けれど、地元のお客様にも楽しんでいただきたいので、都会のような金額に設定することはできません。だからこそ、地元を中心にいい食材を適正な価格で、いちばんいい状態で仕入れることを心がけています。
——最後に。今後について教えてください。
2020年10月、10周年を機にリニューアルオープンしました。これからも、九州の素晴らしい食材を多くのお客様に楽しんでいただけるよう、さらなる高みをめざしていきたいと思います。
——ありがとうございました。
大切なのは“情熱”を持つことです。そして、美味しい料理をつくるためには、それなりの“覚悟”も必要です。私は調理師学校卒業後10年以内に独立しようという目標を掲げ、料理のことはもちろん、経営や会話術など、独立するために必要なことを必死で学びました。その結果、目標よりも1年早く自分の店を持つことができたのです。“情熱”と“覚悟”を持ち頑張れば、自ずと道が拓けるはずです。頑張ってください。